Day 305:処方箋薬という名の危険ドラッグ

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早朝の便でLAに着いた。ここ2ヶ月ほどあるインタビューを追いかけていて、それがいつ起きてもいいように日本との往復分はLAにしていた。友達が拾ってくれた車でマリブまで行き、サンタモニカのギャラリーでショーを見て、まだ行けていなかったThe Broadでジャスパー・ジョーンズのショーを見ようと思っていたのに、渋滞をまったく計算してなくて、ジャスパー・ジョーンズを諦める羽目になった。

会ったことはないけれど、もう何年も名前を聞き続けてきた友達の家族のひとりが、精神分裂症的症状を見せ始めて、ソーシャルに支離滅裂なポストをしたり、知り合いや家族に怒りのメールを送りまくったりするようになって、家族が大騒ぎだ、、、という話を聞いた。何が引き金になったのかを聞くと「アデロールをずっととってきたからだと思う」と返事だった。

アデロールというのは、ADHDなどに処方されるアンフェタミンの商品名である。衝動の抑制力や集中力の増加に効果があると言われている。いつ頃からだったろうか、掃除をするために、とか、明日のプレゼンに備えてといった理由で「アデロールをとった」などと頻繁に耳にするようになって、その他の処方箋薬とは一線を画したカジュアルぶりを不思議に思っていたのだが、最近ようやく問題視されるようになってきた(去年、こんな記事がGQに出ていた)。くだんの彼も、ADHDに対処するためにもう10年以上、アデロールの処方を受けてきたのだという。家族はそれが原因ではないかと薬の処方の中止を願っているのだが、本人が成人だから家族には口は出せない。医師の指導を受けている場合は、精神病院に連れていくことも、本人が同意しなければできない。辛い話だ。

こういう話は驚くほど多い。抗うつ剤や痛み止めを処方され、いつしか中毒になり、精神に異常をきたしたり、ハードドラッグ方向に行ってしまう。こういうことに影響されるのは、青少年から若年層だと思ってしまいがちだけれど、シニアの中毒も語られるようになってきた。処方箋は本当にいともあっさり発行される。医師が副作用の警告すらしてくれないことだってしょっちゅうだ。ちょっとどこかが痛かったりして、処方された薬をグーグルで検索して、ゾッとして捨てたことが何度もある。最近見た調査では、回答者のアメリカ人のうち54%が「乱用の経験がある」と答えている。家にあった痛み止めをちょっとした痛みでとる、というようなことからオーバードースまで入っているとしても、半分以上というのはけっこう高くないか。

マリファナの本を書いている、ということについて、「なんでまたドラッグについて」という反応をされることが日本ではある。マリファナは地面から生えてくる天然の植物である。一方、こうやって簡単に処方され、中毒者をおそろしい勢いで叩き出している医薬品はこれまでほとんど「ドラッグ」扱いされてこなかった。少なくともアメリカでこれまでマリファナが「違法ドラッグ」扱いされ、オピオイドが「違法ドラッグ」扱いされてこなかったのは、単に業界のロビイングの力関係によるもので、今、そういうことがようやく調整されるようになってきた。でもそうしている間に、どんどん精神や肉体を蝕まれていく人が絶えない。医薬業界、ダークである。というわけで、LA市がオピオイドのメーカーを訴えたり、DEA(麻薬取締局)が「家にあるいらない処方箋薬を送ってください」と呼びかける「全国処方箋薬返送日」というイベントが行われたりしている。

備忘録:処方箋なしでアデロールをとることによる副作用7(Bustle)

処方箋医薬品の乱用を懸念するアメリカ人増加(Pain News Network)

Yumiko Sakuma