Day 304:白人至上主義の根っこ

LRG_DSC00167.JPG

私がいない間に、キャロラインが引っ越しをする。だから仕事を終えたあと、会いに行った。シングルマザーをやると決めたはいいが、やっぱりニューヨークは何もかも高い。乳児に加えて、犬も2匹いる。母の住むウィスコンシンからしばらく遠隔でがんばると言っている。彼女の仕事の半分は遠隔でもできるし、同じ金額で一軒家に住むことができる。先日、敗北したような気持ちだと言っていたので、ちょっとどこかへ長期の旅行に行く、くらいの感じで扱おうと思っていた。しんみりしないように、夏には遊びに行こうかなとか、どこか別の場所で合流するのもいいねとか、中間選挙は一緒に見たいね、とか。私とキャロラインの間で起きる会話は、前は仕事のこと、恋愛・男関係、その他の人生にまつわる問題、政治が4等分だったのだが、最近は半分が政治のことを話していて、その他の3つがおかず状態である。

そういえば、最近、デーティング(出会い)アプリを使って、主義主張の違う人を観察したり、チャットをしたりしているのだが(ちなみにデーティングアプリを調査や営業、マーケティングのために使っている人はけっこういます)、自称保守派の白人男性に「保守主義のどういうところに同意するの?」と聞いてみたところ「意見が合うんだよね」と「保守派の哲学者」ジェーソン・ピーターソンという名前をあげてきた。名前をググったら「西洋文明の再建」とか、反フェミニズムとか白人至上主義者警報が鳴る爆弾ワードがわりとすぐに出てきてゾゾっとなった。一瞬、コンピュータを閉じかけたが、がんばってビデオとか見てみた。いやはや、自己啓発の革をかぶった白人至上主義者養成学校なのだろうかこれは。それにしても、こいつ、アジア人女性つかまえてよく言うな、わざとなのかな、と「アジア人女性に、この人あげてくるって大胆だよね」とツッコミを入れたら「どういう意味?」と本当にわかっていないらしい。恐るべし。エンパシーの欠如というやつである。引っかかるわけですよね。知識層風のサブリミナル系白人至上主義者は厄介である。

という話をキャロラインにしたら、今の時代の「保守主義」という言葉の曖昧模糊とした感じが話題になった。「ポルノ・スターをゴムつけずにファックした男が保守派リーダーとして大統領の座に座ってるってどういうこと!?」とキャロラインは発狂している。ポルノ・スターとのセックスはさておき、タイムスに出たばかりの、トランプを支持する人たちについて、ペンシルバニア大学の主導で行われた新しい研究結果の話題になった。3,000人のトランプ支持者を対象にした調査は、これまで広く信じられてきた「経済的不安が要因」説、つまり雇用が海外に流出したことや製造業の衰退は間違いで、彼らをトランプ支持に駆り立てているのは、白人としてのステータスを失うことに対する恐怖感である、と結論づけている。なんだかものすごく納得である。

出会いアプリに話を戻すと、最近、人のプロフィールを読むのが趣味のようになっている。大半の人は、「コーヒー、ワイン、旅」みたいな凡庸な定型なのだが、ときどきよっぽど変わった人とか出てきくると前のめりで読んでいる。そこまで変わっていなくても、年齢、人種、服装といったことと、書いてあること(政治思想や個人的興味)を照らし合わせる作業もけっこうおもしろくて、人は見かけによらないという当たり前の事実にはっとするのである。そしてときどき、人々の孤独を垣間見て胸がきゅーんと締め付けられる瞬間がある。そういう人に限って写真はセルフィーばかりだったりして、友達のいない人のように見えてしまっている。さらにはこういう孤独に苦しんでいるような人たちは、極端な思想に付け込まれてしまうリスクが高い。出会いアプリを使って地道に話を聞いてあげるとか、デーティングのアドバイスをするような活動をしたら、意外に効果あるかもね、とキャロラインと笑いあっていたのであった。なんかこういう他愛ないご近所の会合がなくなっちゃうなあ、と思ったら、帰りに廊下で泣きそうになっちゃった。

備忘録:ジョン・ピーターソンの情熱(Esquire)

トランプ支持者を動かしているのは経済的不安ではなくステータスを失う恐怖(The New York Times)

Yumiko Sakuma