Day 266:無知と悪意のない差別

いったん東京を離れると決めた日、また友が車を出してくれて、何人もの先輩に挨拶ができた。空港に向かう直前には、番頭さんだった武田くんを失ったWACKO MARIAを訪ねた。兄さんが亡くなって2ヶ月、どんな顔でお悔やみは言えばいいのだと戦々恐々としていたが、みんな、あとをがんばるという使命感に燃えたいい顔をしていた。

夕方、出て4年になる「ヒップな生活革命」の5刷が決まったとの連絡があった。しばらく「在庫なし」状態だったのにちょこちょこ新しいレビューがついたり、メディアで取り上げられたりして、ちょいとヤキモキしていたのでほっと一息。そのあと調子にのって呑みすぎて、千鳥足で空港に向かう車内でTwitterを開いたら、「佐久間裕美子さんが『レズの誘惑』なんて不用意な言葉使いするはずないし」というコメントが目に入ってきた。なんじゃなんじゃ、なんのことじゃ。

人気ドラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の原作本が出るというので、駒草出版から帯の文章の依頼を受けて、お引き受けした。「オレンジ・イズ〜」はドラマより本のほうが圧倒的におもしろいし、こういう作品を世に出すこと、意味があると思ったから。だから書いた4行のコメントを寄せたのだが、翻訳者の村井理子さんがアップした帯入り表紙に、「いじめ、セクハラ、人種差別、レズの誘惑……女たちの獄中サバイバル!」という恐ろしい文言が。もちろん私の書いたものではないのだが、私のコメントの上にサブっぽく書かれている。ひえーーー。呑んでいたのもあって、動悸が激しくとまらなくなった。この文章がどう酷いかは、石壁に百合の花咲くというブログに書いていらっしゃる方の説明が理論的かつわかりやすいので読んでみてください。

その後の経緯を見ると、どうやら帯のこの文章は修正されることになりそうで、一件落着なんだろうけれど、いろいろもやもやした。私が出版社の方とやりとりした限りでは、こういう作品を世にだそうという使命感も感じられたし、悪意はないのだろうと思う。そして悪意のない無知が、結果的に差別になったり、人を傷つけたり、ということはよくある。本当によくあるのだ。

そしてグーグルに「レズ」という言葉を入れてみるとよくわかる。「レズ」が差別用語だよ、と教えてくれるエントリーは、最初のページには出てこない。最初のページに出てくるのはアダルト関連だけだ。世間の理解とのギャップは地道に伝えていかないと埋まらないのだよなあとちょっとした脱力感。でもまあ、こういう「事件」が起きるごとに、こういうのはダメなんだなと知ってくれる人が増えるのだと前向きにとらえることにしよう。

あと余談なんですけどね。「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」という邦題はなんでTheを省いたんですかね? OO is the new XXというフレーズは、◯◯は昔でいうところのXX、みたいな感じでよく使われるわけです。Midtown is the new downtownみたいな感じで。でも、邦題のタイトルからtheを勝手にとると、英語を覚えたい人たちが混乱するんじゃないでしょうかね。そろそろもう変な英語の邦題はやめませんかね?

備忘録:性的少数者(LGBT)がどれだけ差別されているかデータで調べてみた(Review of My Life)

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Yumiko Sakuma