Day 210:処方箋薬オピオイドとヘロイン

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最近、かつて遊んでいた男の子が、ヘロインにはまっていると耳にした。アメリカにきて初めて住んだ街にはたくさんヘロイン中毒がいた。あの頃、ヘロインというものは、生きることに望みを失ってしまった人たちが手を染めるものだと思っていた。最近、病気で大好きな人を見送った身としては、生きたいのに命を奪われる人がいるのに甘えている、と思いかける。が、彼らに腹を立てることに意味はない。

今、ヘロインというのものは、アメリカにすっかりまた入り込んで、社会の隅々に浸透している、らしい。少なくとも日常的に、ニュースなどで「heroin epidemic(ヘロインの蔓延)」という言葉を目にするようになったし、HBOからNetflixまでどこのストリーミングサービスでも、ヘロインが問題になっている、というテーマのドキュメンタリーを頻繁に目にするようになった。

今のヘロイン中毒問題がかつてと違うのは、ヘロインの中毒の始まりが、合法ドラッグにあることが多い点だ。ヘロイン中毒に陥る人の4人にひとりは、処方箋の痛み止めを処方され、中毒になって、痛み止めを手に入れられなくなって、そこからヘロインに走る、という2000年代に登場した構図がある。ヴァイコディンやオキシコットンといった痛み止めドラッグに入っているオピオイドという成分は中毒性が高く、依存症に陥る人が多い。私も足を折ったときにいとも気軽に処方されて、たしかに痛み止めの効果は抜群なのだけれど、頭がぼおっとして何も考えることができなくなるのが怖くて、医者の反対を無視して、早い段階でやめた。あとでいろいろ読んで、やめてよかったと胸をなでおろしたものだ。そうやってかつてはいとも簡単に処方されていた痛み止めに中毒になった人々の数は2015年のデータで200万人、ヘロイン中毒者は60万人近い。2016年に出た死者の数は64000人。よく陰謀論の世界で「政府は人口調整をしようとしている」というものがあるけれど、政府が認可した合法のドラッグのおかげでこれだけの人が中毒に苦しんでいるとしたら、陰謀論だとも笑っていられない。昨晩の大統領による年頭教書は聞く気になれずに聞かなかったけれど、オピオイドの蔓延問題が上がったのは新聞で確認した。さすがの政府も、ことの深刻さに気がついたのだろう。が、オピオイド問題への関心を高めるために紫のリボンを着用して年頭教書に出席した、この問題が深刻な州の議員たちからは、早速「口ばっかり」と批判を浴びている。

備忘録:オピオイドとの戦いを約束したトランプに「予算はどこ?」とウォーレン議員ほか(Boston Globe)

告知:芸者について感じたこと、英語で書きました(The Last Magazine)

Yumiko Sakuma