Day 199:ただいまニューヨーク

長旅を終えて少しぼんやりしたい気持ちではあるのだが、寒さでエンジンがやられてしまった車をメカニックのところに持って行ったり、取材に行ったり、たまったメールを片付けるうちに1日が終わってしまった。夜、食事に出かけるのに、本を読みたかったので電車に乗った。ニューヨークの地下鉄に乗るのは久しぶりだ。ときどき旅先から戻ると、ニューヨークが他人の街のように感じられて心細い気持ちになるときがある。ホームで、黒人の男の子が「フリーダム」という言葉だけの歌を歌っていた。電車を降りたところで、予期しない人にばったり遭った。電話をしていたので声をかけるのを躊躇をしたけれど、彼は電話を切って、「let's really make some efforts to hang out」と何度も言った。声をかけてよかった、やっぱりここは自分の街なのだと少しほっとした。

出かけたのは「ピンヒールははかない」の最初のページに登場する大学時代のゼミの恩師久保文明先生を囲む食事会である。おそらく自分がいちばん扱いにくい人間だった時代に、まともに相手をしてくれた初めての大人だった。私の人生を変えた人と言っても過言でない。プチOB会の出席者は、コロンビア大学で教えていらっしゃる彦谷貴子さん、そして朝日新聞の記者で「ルポ トランプ大国」の著者でもある金成隆一さんご夫妻である。学生時代のこと、トランプのこと、それぞれがこれまで目撃してきたセクハラ・パワハラなどの話題で盛り上がった。

金成さんことはもちろん知っていて、大新聞の記者でここまでやる人がいるのだと感心していた。自分もトランプ支持地域をまわったりもしてきたけれど、やっぱり女性だから警戒されないのだなと思うことも多かった。だからご本人に会うのを楽しみにしてた。こういう人なら、トランプ支持基盤のおじいちゃんたちも話をするだろうなと思わせる、オープンな人だった。クリスマス休暇は、わざわざオハイオ州のウォーレンにアパートを借りて取材をしたという。20年アメリカに住んでいるからこそ、自分には見えないことも、伝えきれないこともある。

備忘録:ラストベルトに住んでみた(朝日新聞)

IMG_1131.JPG
Yumiko Sakuma