Day 165:日本の#metoo と被害者叩き

男友達から「パーティのデートになってくれ」とお願いされた。一人で行くのが苦痛の面倒くさいタイプのやつだ。「シングルの利点はそういうのに行かなくていいところなのだよ」と断ろうとしたが、何度も頼まれたので条件をつけて引き受けた。結局、パーティでも二人で政治の話をしていた。やつは「みんながネット中立性や税法改革やセクハラに夢中になってる間に、共和党はムーラーの調査をやめさせようとしている」とプリプリしている。クリスマスまでにムーラーの調査は中止になる、というのがやつの読みである。そんなこと許されるのかな。

帰宅して、はあちゅうさんがセクハラ/モラハラの被害を公表した、というニュースを読んだ(はあちゅうさんとは一度お会いしたことがある)。伊藤詩織さんの「ブラックボックス」以降、日本の#metoo はどう展開していくのだろうかと考えていた矢先である。アメリカでもそうだけれど、被害を名乗り出ると、必ず一定数の悪意や中傷を投げつけられる結果になる。それなりの覚悟がないとできないことだ。彼女たちの勇気に敬意を表したい。こういうダークな暴力行為やハラスメントが減りますように。

ピンヒールははかない」でもレイプの被害を名乗り出た女性ふたりの話を紹介したけれど、特に有名プロデューサーにレイプされた友達のラーキンのケースはリアルタイムで見ていたので、ソーシャルにヒドいコメントがつくのをつぶさに目撃した。信憑性を疑うタイプのもの、被害を被害者のせいにするタイプのもの、なぜそのとき名乗り出なかったのだと責めるタイプのもの、もっとヒドい罵り系、いろいろだ。見ているだけで心が潰れそうになる。こういうのを英語ではvictim blaming (被害者叩き。victim shaming, slut shamingなどのバリエーションあり)。最近では、こういう行為や発言は、call outされる(ツッコミを受ける)風潮になってきているのがまだ救いである。こういう行為に及ぶ人たちの心理はどうなっているんだ、と思ったら、心理学者を取材して書かれた記事を見つけた。日本語では公正世界仮説と言うらしい。「悪いことが起きる人には悪いところがあるに違いない」というやつです。さらには、ストーリーテリングの見地からいうと、被害者のストーリーにフォーカスするとvictim shamingの度合いがあがる、加害者のストーリーにフォーカスすると、victim shamingの度合いが下がる、という調査結果を紹介している。人間ってなあ。自分は被害者の苦しみにフォーカスしてしまうタイプだから覚えておかなくては。

備忘録:被害者叩きの心理学(The Atlantic)

人はなぜ被害者を責めるのか(Togetter)

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Yumiko Sakuma
Day 164:インフルエンサーの新ルール
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朝からぱぱっと取材をして、日下部耕司さんのお宅にお邪魔した。耕司さんはかつてEXTRAというお店をやっていたヴィンテージの目利きで、90年代から住んでいるというトライベッカのロフトにお邪魔した。たくさん不思議で素敵なものが置いてあるのでランチをごちそうになりながら、目が泳いで大変だった。もっとインスタ、アップしてくださいよ〜、などといいながら耕司邸をあとにした。

帰りに車のパーツ屋に寄り、待たされてニュースを読んでいると、ブランドからお金を受け取っていることを開示していない疑いのあるインフルエンサーに、FTC(連邦取引委員会)が警告の手紙を出しているというニュースを読んだ。お金やディスカウントを受けているときは、それを明確に書かないといけないーというルールは前から言れていて、最近Paid Partnershipという文字が入るようになったのはそのせいなのだけれど、実際やってない人も多くて、これからはより厳しくなりそうです。

備忘録:FTCガイドラインでインフレンサー・マーケティングが変わる12項目(TNW)

Yumiko Sakuma
Day 163:#metoo とカルチャーギャップ

土壇場に共和党の一部からも反対が出たりしてたけれど、ネット中立性の撤廃は決定してしまった。が、フリープレスやニューヨーク州の司法省がこの合憲性を法廷で争うらしいので、まだ行方はわからない。夕方、ご近所さんんのアーティスト、松山智一くんのスタジオに遊びにいった。彼ももうずいぶん長いことニューヨークにいる。そしてそのままMaterial Worldの矢野さん、Tokyo Otaku Modeの亀井さんに、アーティストのファンタジスタ歌磨呂くんとご飯を食べにいった。

そして当然、セクハラのことが話題にのぼった。アメリカに住む日本人として、カルチャーギャップがますます大きくなりそうだね、という話をした。アメリカでは、仕事の場での言動の許容範囲が再定義されつつあるから。私も年下の男の子にダーティなジョークとか言わないように気をつけないと。なんせ相手が不快感を持ったらアウトなのだ。

それで思い出したのだけれど、最近、プロフェッショナルの会食で、非日本人女性と日本人男性の間に座っているときに、こんなことがあった。「初めて会ったときには、恋に落ちそうになりましたよ」(男性)、そのまま訳すと女性の表情が少しこわばる。「あ、それ、アメリカでは言っちゃいけないやつかもしれないですよ」とそっと指摘する。またしばらくしてから、彼が今度は英語で、「彼氏はいるんですか?」と聞いた。今度は彼女が目にみえて凍りついた。「あ、それもね、アメリカでは言っちゃいけないやつですね」ともう一度指摘した。これがなぜダメかを日本人男性に説明するのは非常に難しい。おそらく他意はなくて、社交辞令のつもりなのだろうと思うから。でもね、ダメなんです。いやー、難しい。まあプロフェッショナルな席で、相手をそういう対象として見ていると思わせないほうが得策です。みなさん、気をつけてください。

備忘録:#metooムーブメントに日本のメディアが混乱(The Japan TImes)

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Yumiko Sakuma
Day 162:最近の賃貸事情
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外に出る予定がないなとのんきにしていたら、向かいの子供の面倒を見ることになったり、スーパーがコーヒーを飲みにきたり、さながらご近所感謝デーのようになった。コーヒー淹れついでに、様子がおかしい照明のソケットを見てもらったりしてね。8世帯しか入っていないビルなので、隣人との距離は近い。向かいには、シングル男子が入居したと思ったら、妊娠した彼女もそこにジョインし、子供が生まれたと思ったら、二人は別れ、男子が出ていった。けれど子育ては一緒にしていて仲は悪くなさそうだし、しかも下の階のリノベをなぜだかその男子がやっていて、なんだかもうよくわからないことになっているが、平和なことは間違いない。一人暮らしにはご近所付き合いほど心強いものはないし。

ところで最近グリーンポイントに住んでいる、と日本人に言うと「素敵なところに住んでるんですね」と言われるが、素敵なところになったのはこの数年のことなので、なんだか不思議な気分になる。不動産サイトなどを見るとこのあたりの家賃の高さにびっくりします。とはいえ、うちのブロックだけで今4軒の建築が進行しているくらい恐ろしい勢いで新しいアパートがどんどん建つので、アパートがたくさん余っているようである。ちょっと前よりもずいぶんとだぶついている。で、調べてみたら、アパートが余っているのはうちの近所だけではなかった。

備忘録:マンハッタンのアパート空室数が過去8年で最高水準にーCitiHabitat調査(AM NewYork)

告知:スプツニ子さんとの対談が「Next Tokyo 『ポスト2020』の東京が世界で最も輝く都市に変わるために 」に掲載されています。

Yumiko Sakuma
Day 161:ありがとうアラバマ

朝からアラバマの上院議員特別選挙にどきどきし、速報を片目で見ながら仕事を終え、パーティとディナーに出かけてへべれけなときに、民主党候補のダグ・ジョーンズが勝った、という速報を見た。帰りのキャブで黒人の運転手さんに「ダグ・ジョーンズが勝ったね」というと、満面の笑みが返って来た。

この選挙はどれだけ日本で報道されてたのかな。アラバマは世帯あたりの所得で見ても、かなり下のほうの40位台で、クリスチャン人口が80%以上という、真っ赤な州である。最後に民主党候補が上院選挙に勝ったのは1992年で、近年では民主党候補が勝つ可能性はゼロに等しいと思われていた。ゲイやイスラム教徒を目の敵にするクリスチャン候補ロイ・ムーアが、KKKのテロリストを検挙した元検察官ジョーンズを負かして圧倒的勝利、となるはずだったところが、ムーアが30代のときに性的行為を強要された、と当時ティーンだった女性たちが名乗り出てきて急に接戦になった。それでも中絶を支持する民主党候補には投票できない、という有権者の多いアラバマだけに、私のまわりには悲観的な人が多かった。

人口24位の州の特別選挙がこれだけ注目されたのは、上院の議席が52対48から51対49に変わるから。2020年の中間選挙のムードに影響を及ぼすから。でもそれ以上に、宗教右派で差別主義者のムーアが、上院の票を持つことのダメージが大きいから。南部のこんな小さい州が、アメリカの政治の行方に大きく影響を及ぼしてしまうのである。おそろしや。

ここんとこ毎日ニュースを見るたびに「あーあ、最悪だ」と思っていたので、昨日より状況は少し良くなったのだと実感する。ざまあみろ、と意地悪い気持ちでムーア側がなんと言っているかをネットに探すけれど、すっかり静かである。でも、かわりにTrain Wreck for the Ages (世紀の大惨事)」と評されたムーアの広報官によるインタビューを発見した。にやにや。

備忘録:ムーアの広報官、インタビューに応えて世紀の大惨事的に

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Yumiko Sakuma
Day 160:トランプ時代のビザ問題
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移民法を専門にする弁護士さんと話をする機会があった。予想していた展開だけど、トランプ政権になって、ビザ発給の審査が厳しくなっている。テクノロジー関連は弱かったはずの移民局(INS)でさえも、最近は、申請者のソーシャルをチェックしたりもするようになっているらしい。ビザ問題は、いつの時代も、政治状況に大きく影響を受ける。海外からの労働者のスキルに依存度の高い、シリコンバレー方向からはロビイングも行われているようだけれど、なかなか成果は出せていないと、少し前にもラジオで聞いた。

と、今の状況を調べてみたら、National Venture Capital Associationがトランプ政権の政策を法廷に持ち込んで勝利していた。オバマ政権がセットアップした、海外の起業家のビザを免除するルールの施行を、トランプ政権が遅らせていて、その際に世論を仰がなかったのがNGとなったらしい。いろんなところでいろんな戦いがなされているのだなあ。

備忘録:判事、トランプ政権によるオバマ時代の「スタートアップ・ビザ」遅延を破棄。投資家団体に同意

Yumiko Sakuma
Day 159:ダイバーシティとビジネス

たくさん原稿を書いた。そして夜だけ、ベッドスタイに住むニックとエルロイーズの家にご飯を食べに行った。届いたWIREDJ APANの最新号をぱらぱらとめくった。

今回は、ダイバーシティ(多様性)の特集だ。Refinery29とThem.という今勢いのあるメディアを取材した。Refinery29は、女性メディアとして始まったけれど、「その時代の美」を提案する既存メディアとは一線を画した「みんなそれぞれが美しい」という民主的なメッセージで急成長した。Them.はコンデナストが始めたLGBTQ+のメディアである。共通点は「どんな人にも居場所があるはず」というメッセージである。両方とも、スタイルのコンテンツと同じくらい、政治的・社会的コンテンツに力を入れている。

ダイバーシティという言葉は、伝統的には文化的・人種的多様性を指すことが多かった。最近では、性やセクシュアリティも含まれるようになった。肌の色も、セクシュアリティも、みんな少しずつ違っていいーーそういうメディアが力を持つようになっている。もちろんそこにはビジネス戦略もある。多様である会社のほうがパフォーマンスが高いという調査結果だってあるのだ。けれど政治に期待できることが少ない今、ビジネスの世界から出て来る「進歩」が頼もしい。世の中は、少しずつでも、そしてときには後退しながらもやっぱり進んでいるのだ、そう思わせてくれる取材だった。

備忘録:なぜ多様性は意味があるのか(McKinsey)

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Yumiko Sakuma
Day 158:白人テロリズム
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雪が降った。積もる前に車を動かしたほうがいいかなあなどと考えていると、友達のジョニーから連絡があったのでランチを食べに行った。「ティモシー・マクヴェイのドキュメンタリー見た?」という。今年公開された「Oklahoma City」のことである。ちょうど数日前にユナボマーの捜査をテーマにしたドラマ「Manhunt」を見終えたばかりで、ちょうどその時代のことを考えていた。だから夜、「Oklahoma City」を見た。

ティモシー・マクヴェイがオクラホマ・シティの連邦ビルを爆破したのは1995年。子供19人を含む168人が亡くなった。作品では、白人至上主義のアーリア・ネイションに参加していたランディ・ウィーバーと連邦政府の間に銃撃戦が繰り広げられたルビー・リッジ事件と、連邦政府によるキリスト教系カルト教団への強制捜査の結果、死亡者が出たWaco事件のあとに、米軍を退役したマクヴェイが連邦政府は悪であると考えた結果、連邦ビルを爆撃することを決めた様子が描かれているのだが、今、全米で500以上あると言われる白人至上主義・分離主義の武装団体のルーツは、こういう一連の事件にある。

マクヴェイは、私が報道の世界にまだいた2001年に死刑に処され、この世を去った。「死刑という概念は矛盾している。死は罰ではなく、逃避だ。彼らは僕を逮捕して、殺すんだ、勝ったんだと、僕をトロフィーのように扱っているが、勝ったりしていない。雑な言い方をすれば、168対1なんだから」という言葉を残している。死ぬことをのぞんだマクヴェイが、懺悔の気持ちをまったく見せないどころか、中指を突き立ててこの世を去っていくのを見て、死刑はまったく役に立たないと思ったものだ。

改めて振り返ってみると、ユナボマーとマクヴェイは白人テロリズムのパイオニアである。そして彼らを激しく追いかけたのはクリントン政権のジャネット・リノ司法長官だった。白人至上主義者がクリントン夫妻を激しく嫌うのもそのあたりと無関係ではない。そしてこういう勢力とつながっている白人ナショナリストたちが、アルトライトと呼ばれる勢力につながり、今では政治力も発信力も手に入れてしまっている。恐るべし。

備忘録:アルト・アメリカ:白人テロリズムを論じるべき時は今(The Guardian)

Yumiko Sakuma
Day 157:未来の素材

ダウンタウンで取材をし、Bags in Progress、Monroe Garden、Sayaka Davisさんなどのポップアップに顔をだし、生まれたばかりのUllaに会いにいって、Best Madeのホリデーパーティに行った。

最近、未来の素材のリサーチをしているので、Bags In Progressのちはるさんとも、キャロラインとも合皮やヴェジタリアン・レザーの話をした。ヴェジタリアン・レザーというと、ステラ・マッカートニーの試みが有名だけれど、まだ値段が高かったり、ペトロニウムが使われていたり、課題も多いようだ。けれど、消費者からの要求もあって、この数年の間で、ヴェジ・レザーを使う会社はどんどん増えている。そういえば先日取材にいったショップでも、「お客さんから『この素材はエシカルなのか』という質問が増えている」と言っていたなあ。

初めて興味を持って会いに行ったとき、まだ3人しかいなかったBest Made((ちなみに私は、日本で作っている商品のサポートをしている)は、今ではすっかり成長し、さらに最近は、Biodegradable(分解可能な)シルクを作るBolt Threadsという未来の素材を開発するスタートアップの傘下に入った。そして、今週初めて発表したコラボレーションのビーニーは、あっという間に売り切れてしまった。そんなわけで、こちらでも未来の素材が話題になった。

食の世界でも、アパレルの素材の世界でも、バイオロジーができることの可能性がどんどん広がっている。このあたり、もうちょっと取材してみようと思う。

備忘録:このストライプのビーニーが合成のスパイダーシルクの可能性を示している(WIred)

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Day 156:冬の寒さとニューヨークの大家
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朝起きたら、家は冷蔵庫状態になっていた。お湯も出ない。管理人のマーブに電話すると「昨日、オイルのデリバリーが来なくて」という。そろそろ築百年になろうかという我が家の暖房はオイルを使ったラジエーターなのです。外は気温一桁で、ヒューヒューと風が吹いているよ。「今日来るの?」というと「そのはずなんだけど」と心もとない。こういうことが起きるのがニューヨークである。ちょうど山で使うように湯たんぽを買ったのを思い出し、まあなんとかなるかと腹を括った。

結局、うちの暖房は昼間に復旧した。良心的な大家と良心的な管理人のおかげで、こういうとき対応は早いけれど、ときどき「大家が暖房を直してくれない」という声を耳にする。ニューヨークの冬、大家が暖房を供給しないのは違法行為である。寒くなると、悪質な大家に暖房を供給してもらえずに暖房なしで凍えているテナントのストーリーが出たりする。

こういう記事を読んでいると、こういうことをする大家には常習犯もいて、悪いやっちゃなー、と思うわけだが、ニューヨークのようなところに住んでいると、血も涙もない大家のストーリーはゴロゴロと転がっていて、今更驚くまでもない。ところでNY市は、秋に「最悪な大家100人」というリストを発表した。一番悪いやつらが晒しの刑にあったわけである。おまけにPublic Advocate(市政監督官)は彼らと取引している銀行にプレッシャーをかけているのだという。住民のために頑張ってくれてる政治家がいたよ。レティティア、ありがとう。

備忘録:レティティア・ジェームス市政監督官、最悪な大家に融資する銀行を公表へ(NY Daily News)

Yumiko Sakuma
Day 155:タイム誌の表紙と#metoo の続き

ちょっと前に、トランプがツイートで、タイム誌の「Person of the year」に打診されたけれど断ったと書いたことに、タイムしが反論したりしていたので、「もうそんな季節か」などと思っていたが、発表の時期がやってきた。今年の顔は、「サイレンス・ブレーカー(沈黙を破った者たち)」であった。ハーヴェイ・ワインスタインに襲われた経験を公表したアシュリー・ジャッド、記念写真撮影の最中にいきなりお尻を触ったラジオのパーソナリティを訴えたテイラー・スウィフト、Uber社内のセクハラを告発したスーザン・フォウラー、カリフォルニアの農場での労働環境を告発したイザベラ・パスクアル(偽名)、カリフォルニア州議会のセクハラ改善を求めたロビイストのアダマ・イウ4人が表紙になっている。そして誌内でも、権力からの圧力に屈せずに声をあげた女性や男性が取り上げられている。なるほど。(が、タイム誌は、表紙にならなかった候補者のことも取り上げていて、そのなかにトランプ大統領が入っており、しかも本文で、彼にセクハラされたという16名の女性たちのことを触れなかったということでツッコミを浴びている)

それはさておき、これだけセクハラがどんどん出てくると、膿ができるまでは止まらないのだろうなと想像されるし、まだどこかでビクビクしている男性たちもいるのかもしれないけれど、このあとムーブメントがどこへ行くのか心配である。なんせ、過去にもセクハラはあったのに、数ヶ月前までは、くだんの男たちが大手を振って世界を動かしていたわけなのだから。と思っていたら、ヒントを見つけた。今回のタイム誌に、タマラ・バークさんという人が取り上げられていた。彼女は、レイプや性的暴行の被害者を助けるための活動をしており、ハッシュタグになる前から、Me tooというフレーズを使っていたのだという。その人がグラマー誌に寄せたエッセイに紹介されていたクオートにはっとなった。

「去年何人の女性がレイプされたかは語られても、何人の男が女性をレイプしたかは語られない」(ジャクソン・カッツ)

今回の一連の出来事がショッキングなのは、被害者たちの語るセクハラの内容が「そんなことしていいと思っていた人がこの世にいたか!?」と驚くような論外レベルで、男性たちのなかに「どこまでOKでどこからダメか」という明確なラインをまったく勘違いしていた人たちが権力の中枢にいた、ということである。そのあたりの啓蒙が必要なのだということなんだろう。

備忘録:女性への暴力は男の問題 ジャクソン・カッツ(TED TALK)

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Yumiko Sakuma
Day 154:シングルママ誕生
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年末、どこにも行かずにニューヨークで生産性の高い時間を過ごそうとしている。そしたら今度は生産性にとらわれすぎていつも焦っている。だから今日は、ぼんやりした時間がほしいとあえて電車に乗った。そしていつも歩かない8アベをわざわざ歩いた。何も見つからなかったけど。ユニクロのプレスプレビューの会場の向かいのDavid Zwirner Galleryでは草間彌生展をやっていて、長い列ができていた。

ももちゃんとお茶を飲んだあとにキャロラインに連絡した。8日前に出産して、会いに行くタイミングを探っていた。傷口が腫れてきたので救急センターで待たされているという。付き添いをしながらおしゃべりした。出産に際して、キャロラインのママがしばらく来てくれている。ねえねえ、ママがいなくてもできたと思う? 「誰かいなければできなかったと思うけどできると思う。たとえば、あなたがやるとしたら、私たちが手伝うからできると思う」とウィンクするキャロライン。が、とても自分にできるとは思えない。生まれたばかりのウラは、キャロラインのママとお留守番だったので対面はかなわず。8日前に帝王切開で子供を産んだとは思えないほど元気なキャロライン、すっかりママの顔になっていたよ。

話題は税法改革である。上下院で通った税法改革の内容を見ていると、シングルひとり世帯の個人としても、個人事務所としても暗澹たる気持ちになるよ。シングル・マザーになったキャロラインにとってはさらにである。「シングル・マザーなんて、彼ら(共和党)が一番罰したいタイプだから!」とキャロラインはぷんすかしている。これまであった子供ひとりあたり4000ドルの扶養控除が廃止される見通しなのだ。シングルパレンツ人口2200万人が影響を受ける。大変な人を罰してもしょうがないと思うのだが、反対側の論調を見ていると「きちんと結婚生活をしている人たちが罰せられ、シングルの親に報奨を与えている」という感覚らしい。エンパシーの欠如ってやつだ。

備忘録:シングル・パレンツ、共和党の税法改革で負ける可能性(CNBC)

Yumiko Sakuma
Day 153:署名サイトとボットの攻防

友達のスコットが毎年出している日めくりカレンダーのリリース・パーティに行った。Twenty Four Hour Womanというキャラクターが、毎日、何かしているところを描いたカレンダーは、私もとても気に入っていて、毎年ギフトに使っているのだが、今年の彼女は、例年どおりいろんなアクティビティをして人生をエンジョイしつつ、国旗を焼いちゃったりもしているらしい。

帰り道に女友達がFacebookをあけて、大統領弾劾を求める署名サイトが拡散されているのを見て、「署名サイトってサインしてる?私絶対しないけど」という。こういうところにサインしていると、名前を使われたりするのだ、と。最近の政府はやりたい放題で、上下院がそれぞれ通した税制改革案はスモールビジネスやミドルクラスを圧迫するうえに、健康保険からはじき出される人が多数出る見込みだし、ネット中立性規制は撤廃に向けて進んでいるし、昨日はトランプ大統領が国定公園を縮小することを発表して、血圧があがるようなことばかり続いているが、「あくまで反対を表明し続けないといけない」という空気感である。ところが彼女は、「サインしないほうがいい」という。ネット中立性規制撤廃に向けてFCC(連邦通信委員会)が解放したコメント欄は、ボットに荒らされて結局意味がなかったのだと。調べてみると、たしかにすごいことになっている。こうやって振り回されているうちに、どんどん悪いほうに進んでいく。ため息しかでない。

備忘録:ネット中立性関連のコメント大半の出どころはボットとフェイクメールーピュー調査(USA TODAY)

告知:坂本龍一さんを題材にしたドキュメンタリー「CODA」の感想を書きました。

植本一子さんとの対談、第三回がアップされました。

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Yumiko Sakuma
Day 152:アジア系移民の政治的志向
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今週末は連日お祝いで、今夜はRaggedy Threads のジェイミーの誕生日だった。わりと少人数の夕食会、隣に座ったのはBlluemadeのリリーとアレックスだった。リリーは、台湾出身の中国人母と白人の父親のもとに生まれたハーフで、親世代のアジア系移民との政治感覚の違いが話題になった。「アジア人は、移民のモデルなのよ、とうれしそうに言ったりする。白人社会に入り込むことがよしとされていた世代」。外のエスニック・グループと自分たちを比較したりするような感覚は若い人たちにはない。

親たちの世代のアジア系移民は、反共意識が強かったし、受け入れてもらったという感謝の気持ちもあって、長いこと共和党寄りだった。90年代には、白人以上にコンサバティブなマイノリティグループと言われたりもしたらしい。それが変わったのは2000年代に入ってから。アジア系の半数以上がジョン・ケリー、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントンを支持してきた。

今、アジア系アメリカ人は、マイノリティのなかで一番人口を伸ばしている(ヒスパニックを抜いて)。が、投票率は47%と外のエスニック・グループよりも低い(黒人は66%。白人は64%)理由を調べてみると、言語の壁もあるし、アメリカに住んでいても外国人の感覚で住んでいる人が多いこと、選挙運動が届いていないことなどが理由としてあがっている。アジア系有権者の割合は、2044年には10%になると見込まれている。とすると将来のカギを握ってもおかしくない。楽しみである。

備忘録:アジア系アメリカ人の低投票率は、無関心というよりアイデンティティ問題(Pacific Standard)

 

Yumiko Sakuma
Day 151:性的暴行の男性被害者

クラウン・ハイツにロケハンに行き、夜はキキちゃんのバースデーを祝いに行った。バースデーガールは、自分の誕生日なのにいそいそとヴィーガン餃子を焼いていたよ。

夕方、家の近くで男性に呼び止められた。ナンパ、というふうでもなくて、道でも聞かれるのかなと思った。「子供の頃、レイプされて、女性とうまく話すことができないんです。話し相手になってくれませんか?」。丁重にお断りしたけれど、少しだけ立ち話をした。

セクハラ、性的暴行、レイプといった性的犯罪において、男性の被害者は思うよりずっと多い。10月以降の一連の騒ぎでは、ケヴィン・スペーシーに襲われたことを公表したアンソニー・レップが記憶に新しいけれど、ある統計をみると、届け出のあるレイプの14%の被害者が少年・男性だという。とはいえ、性的犯罪の統計はあまりあてにならない。届け出ない被害者がどれだけいるのか推測するのは難しい。

備忘録:性的暴行の男性被害者への態度を変えなければいけない理由(High Snobiety)

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Day 150:培養肉という未来
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SHIZENにヘアカットにいき、ハトリミホちゃんのライブに顔を出してディナーに行き、さらに遊びに行った。東京でピザ屋Pizza Sliceをやっている猿丸くんとお茶をしているときに、培養肉の話題になった。

培養肉(Lab Meat、Cultured Meat,、In Vitro Meatなどと呼ばれている)は、アメリカのスタートアップ界でも注目を浴びる新分野である。プラント・ベース(植物性)の食品会社が開発を進めていたり、培養肉を作るスタートアップが生まれたりしている。今のように動物を殺さずに「肉」を作れるし、温室ガスの排出も少なくなる(反論もある)、伸びる肉の消費量を支えることができる、というのが利点だということである。FDA(食品医薬品局)の認可を得ないといけないし、実用レベルまで開発できているところは少ないようだけれど、きっと時間の問題なんだろう。世界の人口を、動物を殺す犠牲を払わずに食べさせることができる、というイノベーションのコンセプトは、聞こえはいいのだけれど、調べてみると懐疑的な声も多い。

培養肉の開発に乗り出しているスタートアップには、植物ベースのマヨネーズなどを作っているHampton Creekなどの名前があがっている。けれど培養肉は植物性ではない。生まれる前の仔牛の血を抽出したFBSという材料を使う。そんなことを読んでいたら、「やっぱり自分は食べたくない」という結論にいたった。

肉を食べるのをやめてから、いろんなベジタリアン・レストランを試していてそれがとても楽しいのだけれど、ベジの外食の世界にも旧世代と新世代があって、旧世代はフェイク・ミートなどを使いがちである。それはそれでありだとは思うけれど、肉もどきを使わずにやる店が多い新世代のほうが楽しい。結局、「肉」に対するこだわりが馬鹿らしく感じてしまうのだ。

備忘録:ゾッとする培養肉の真実(Slate)

Yumiko Sakuma